風の国から Vol.3

by Peko

 お元気ですか。今日はトレス・デル・パイネ国立公園(以下、パイネ)についてお話します。
 パイネへは、シーズンになるとプエルト・ナタレスから1日1往復の定期バスが出るのですが、私たちは少し早かったこともあって、2人のイスラエル人に誘われたミニバスのツアーに便乗してパイネに入りました(余談ですが、チリにはイスラエルの若者がたくさん旅行に来ています。皆、兵役を終えたばかり、なんだそうです)。
 パイネは名前の由来となっている3本の塔のような岩山群(TRRES・DEL・PAINE)を中心に、青くかがやく美しい氷河、ナンキョクブナの深い森、草原、湖、乾燥した荒野と、いろいろな環境が揃ったところです。公園内の数ヶ所にレンジャーが生活していて、7日間パイネ一周ルートを代表に、コシナ(チリ風?薪ストーブ)を備えた無人避難小屋のある長短のトレッキングルートがいくつかあり、食料とシュラフさえあれば、誰でも自由に行けるようになっています。
 今、パイネは春から夏へのよい季節を迎えています。私たちは、11月30日から12月19日までの20日間をパイネで過ごしました。入ったときは、一面のタンポポ畑だった草原も、帰る頃には真っ白なマーガレットにすっかりお色直ししていました。グアナコもノウサギも、カイケン(マゼランガン)やニャンドゥ(ダーウィンレア)も、帰る頃には皆子連れになっていて、季節の流れを感じさせてくれました。
 大空を見上げると、風の中を悠然と飛びつつも、私たちを横目でしっかり観察している巨大なコンドルが、草原には「えらいこっちゃ!」というように激しく走り回るノウサギや、哲学者然として「わが道を行く」という風のハイイロギツネが、ブナの森にはエサ運びに忙しそうなたくさんの小鳥達や貫禄十分なカラカラ(ワシの一種)などなど、20日間にたくさんの獣や鳥に出会い、その生活の一端を見せてもらうことができました。心残りはいっぱいですが、12月19日午後、プエルト・ナタレスへの定期バスに乗りパイネを後にしました。
 これから、プンタ・アレナスまでの250qは、自転車で走ろうと思っています。パタゴニアに吹く風は風速20〜30m/s、時に40m/sを越えることもあるので、横風や向い風をくらうと自転車ではまずまともには進めません。でも、プンタ・アレナスまではほば追風で走れることと思います。出発は明日。クリスマスをプンタ・アレナスで迎えるのが目標です。
 では、また。

 プエルト・ナタレスにて 1989.12.20